越境ECに携わる方には忘れてはならないのが「消費税還付」です。これは越境ECを行う上での最大のメリットといえるでしょう。
今回は必須の「消費税還付」について説明します。
目次
消費税は免税対象
海外へ商品を輸出する際は、消費税が免除されますが、仕入れをはじめとする経費には、もともと消費税がかかっています。
これら仕入に対する消費税は申請することで返還してもらうことが可能です。これは、内国消費税である消費税は外国で消費されるものには課税しないという考えに基づくものです。
消費税とは、日本国内で消費される商品や、サービスに対して課されている税金ですが、越境ECにおいて消費税は免税対象とされております。
税金を負担するのは消費者ですが、国への納付は、商品やサービスを提供した事業者が行います。
越境ECの場合、商品やサービスを提供する相手は、海外の消費者であるため、消費税は発生しないため、免税となります。
本来、経費について支払った消費税は消費者からいただいた消費税から控除し残った消費税を納税するのですが、輸出の場合消費税を頂かないため経費について支払った消費税が還付されます。
したがって、越境ECで販売する商品の仕入れや輸出に係る国内の経費にかかっていた消費税は還付を受けられます。
還付申請は、一定の条件を満たしたうえで、必要な書類をそろえなければなりません。
越境ECで消費税還付を受けるための条件とは
消費税課税事業者であること
消費税の還付を受けるには、消費税課税事業者である必要があります。消費税課税事業者の定義や必要な手続きは、以下のとおりです。
消費税課税事業者の定義について
消費税課税事業者とは、課税売上高が1,000万円を超えている事業者です。法人なら事業年度の前々事業年度、個人事業者なら、
前々年の暦年の売上高が対象となります。なお、新設法人は、資本金が1,000万円以上であれば、課税事業者として認められます。
消費税課税事業者に該当する場合、所定の手続きが必要です。
必要な手続きについて
課税事業者は、「消費税課税事業者届出書」を作成し、所轄の税務署長に提出します。
書類は国税庁のWebサイトからダウンロードできるので、すみやかに作成して提出しましょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/pdf/1461_03.pdf
原則課税を選択していること
消費税の計算方法は、「原則課税方式」と「簡易課税方式」の2種類があります。
原則課税方式とは、「売上に含まれる消費税額」から「仕入れや経費に含まれる消費税額」を差し引いた金額を、
消費税として納める方法です。
ただし、原則課税方式を選択していないと、消費税の還付はうけられないため、注意しましょう。
還付申請書類を提出していること
消費税の還付を受けるためには、所轄の税務署長に申請書類を提出しなければなりません。
必要な書類や申請のタイミングは、以下のとおりです。
申請に必要な書類
還付申請には、課税期間に対応する確定申告書、仕入控除税額に関する明細書、課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書が必要です。
国外に商品を輸出したことを証明する必要があるため、輸出許可書も提出します。
(輸出許可書は、一般的にはアウトソーシングしている物流会社から交付されます。)
さらに、消費税を払っていることを示すために、仕入れの納品書や領収書などの帳票類も提出しましょう。
(また、輸出許可書や領収書等は提出義務はありませんが、保管義務があります。)
申請のタイミングについて
申請のタイミングは、法人と個人事業主でそれぞれ異なります。
法人は課税期間の末日の翌日から2カ月以内、個人事業者は課税期間の翌年3月末日までに、申請する必要があります。
越境ECで消費税還付が受けられないケースとは
越境ECを行っていても、消費税が還付されないケースもあります。どのような場合に、消費税還付が受けられないのかを解説します。
消費税免税事業者を選択している
消費税免税事業者を選択している事業者は、消費税還付の対象にはなりません。また、課税売上高が1,000万円以下は、消費税免税事業者となります。
売上実績が1,000万円以下の新設会社も、最初から消費税が免除とされている可能性があります。
簡易課税を選択している
課税売上高が5,000万円以下の事業者は、簡易課税を選択できます。
簡易課税とは、業種ごとのみなし仕入れ率を用いて、すでに支払っている消費税額を計算する方法です。
計算が簡単である反面、還付金額の算出ができないため、還付を受けられません。
越境ECでの消費税還付の注意点について
課税業者や原則課税の選択
免税事業者は、「消費税課税事業者選択届出書」を提出すると、課税事業者へ変更できます。
また、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」の提出により、簡易課税から原則課税に切り替えられます。
ただし、書類提出後2年間は、免税事業者や原則課税に戻せません。
売上高の見通しをしっかりと立て、課税売上高が1,000万円を今後も超えていくかどうかを見極めたうえで、
手続きをすべきかどうかを判断しましょう。
各種書類は必ず保管
越境ECで消費税の還付を受けるためには、輸出を行ったことや、仕入れで消費税を払ったことを証明する書類が必要です。
提出を求められる書類は、輸出証明書、請求書、納品書、領収書などです。
発行期限が定められている場合もあるため、なくさないようにしっかり保管しておいてください。
還付金はすぐに支払われない
申請を終えてから、還付金が支払われるまでには、1カ月から1カ月半程度かかります。
申請しても、すぐに支払われないため、運転資金への充当を予定している場合は、できるだけ早く申請しましょう。
なお、e-Tax(電子申告)を利用すると、審査が行われ、申請から2週間程度で還付金が支払われます。(電子申告でも場合によっては遅い場合もあります。)
消費税を1年以外の期間で申告するには課税期間の特例選択届出書の提出が必要で、短縮できる月は1月か3カ月になります。
最後に
この記事に掲載している情報は、予告なしに変更または廃止する場合があります。これらの情報の内容適時性、正確性、完全性等について一切保証、確約するものではありません。また、当記事の情報等のご利用により万が一何らかの損害が発生したとしても、当社は一切責任は負いません。
消費税還付には手続き等が必要ですが、税制上のメリットを得ることができますので、めんどくさいとは思わず、忘れずに申告しましょう。