日本からの酒類の越境EC販売は可能か?


「日本のお酒を海外にも販売したい」というご相談をいただくことが増えています。
本記事では、日本から酒類を越境ECで販売することは可能か? という疑問にお答えしつつ、販売に必要な条件や販売しやすい国・地域、配送業者の選び方について解説します。

結論から言うと、所定の条件をクリアすれば、酒類の越境EC販売は可能です。
日本酒、焼酎、ウイスキーなど日本の酒類は海外でも高い人気があり、越境EC(Cross-Border E-Commerce)によって世界中の消費者に届けることができる魅力的なビジネスです。ただし、酒類は規制が厳しいカテゴリーのため、事前準備は慎重に行う必要があります。

越境ECで酒類を販売するための3つの条件

 酒類をBtoC形式で越境EC販売するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。

・日本側の輸出手続きがクリアされていること

・相手国が個人輸入としての酒類受け入れを許可していること

・配送業者が合法的に酒類を配送できるルートを持っていること

日本側の輸出手続きについて

 越境ECで酒類を販売するには、次のいずれかの免許が必要です。 

・通信販売酒類小売業免許(主に個人向け販売)

・輸出酒類卸売業免許

 越境ECの場合、個人消費を前提としているため、「通信販売小売業免許」で要件を満たすことができますが、所轄税務署によっては「一般酒類小売業免許」を求められる場合もあるようです。実際にどの免許が求められるかは所轄税務署への確認が必要です。

相手国の酒類受け入れ状況

 国ごとに輸入規制は異なり、中には個人による酒類輸入を全面的に禁止している国もあります。弊社が越境販売している国・エリアの一例です。(※規制は変更される可能性があるため、必ず最新情報をご確認ください)。

 比較的規制が緩やかな香港は、越境ECの初期販売先として特におすすめです。関税がかからず、個人によるアルコールの輸入も認められています。さらに、商品ラベルについても英語や日本語の表記がそのまま使用できるため、日本国内向けの商品を大きな変更なしで販売できるという利点があります。

 一方で中国は、酒類の輸入自体は可能ですが、個人輸入に関しては非常に厳しい規制があります。たとえば、CIQ(中国検験検疫)への登録、中国語によるラベル表示、保税区を経由した配送などが必要になります。そのため、Tmall Globalなどの越境ECプラットフォームを活用するか、現地パートナーとの提携による販売が、より現実的な選択肢となるでしょう。

配送業者の選び方

 配送業者によって取り扱える酒類や対応エリアは異なります。特にアルコール度数24%以上の酒類は航空便では送れないケースが多いため注意が必要です。

 一般的に、日本郵便が提供するEMSは、酒類の取り扱いができない国が多いため、越境ECでの酒類輸送にはあまり適していません。一方で、DHLは酒類輸送の実績が豊富で、B2C・B2Bの両方に対応可能です。FedExも対応していますが、ラベルに関する要件が厳しくなっているため、注意が必要です。なお、両社ともに通関サポートを行っており、必要に応じて相談するのも良いでしょう。

 このように幅広い商品カテゴリに対応できる大手配送業者も選択肢のひとつですが、酒類に特化した専門の配送業者を利用するのもおすすめです。越境酒類販売に特化したサービスは、規制や通関に精通しており、信頼性の高い対応が期待できます。

まとめ

 酒類の越境ECは大きなビジネスチャンスですが、輸出手続き・現地規制・物流という3つの課題をクリアする必要があります。特に、販売する国ごとに規制が異なるため、対象国の選定と事前調査が成功のカギとなります。まずは香港など比較的始めやすい市場からスタートし、実績を積んでから中国のような大市場への展開を検討するとよいでしょう。